「水漫金山」 中国の名作古典「白蛇伝」をテーマとした中国アニメ

中国の名作古典・白蛇伝をテーマとした中国アニメ「水漫金山(shuǐ màn jīnshān/シュイマンチンシャン)
2012年の作品で、制作会社は南京鸿宝影视。
映像も音楽も、キャラクターにも魅力がある作品です。

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「水漫金山」は中国でとても人気がある古典の恋愛物語「白蛇伝」をテーマとした作品です。
白蛇が人間の若者(许仙)に救われた恩に報いるため、数年後に人間の姿で地上に降り立ち、二人が恋に落ちるのだが、妖怪が人間に近づくことを善しとしない和尚・法海が二人のなかを引き裂こうとするといったお話です。中国では四大恋愛物語の一つに数えられる名作だそうです。
また、白蛇伝は日本でも初の長編カラーアニメとして映像化され、日本のアニメ業界にも多大な影響を与えた作品として知られているようです。

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お話は、突如現れた残忍な蛇の妖怪「蛙面水蛇(wā miàn shuǐshé/ワーミエンシュイシャー)」に襲われそうになっていた白蛇「白素贞(bái sùzhēn/バイスーチェン)」が、自然と動物を愛する心優しい少年「许仙(xǔ xiān/シューシエン)」に命を救われるところから始まります。
上記画像のなぜかロン毛の蛇が「蛙面水蛇」。
白蛇伝はもともと白蛇と悪い和尚「法海」が争う作品で、この蛙面水蛇はアニメ版にアレンジされたオリジナルキャラとなっているようです。

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この若い青年にしか見えない僧侶が「法海(fǎ hǎi/ファーハイ)」です。たぶん本来の白蛇伝では40代とか50代くらいのはず。
白蛇伝では悪人の印象でしかなかった法海ですが、第三の勢力「蛙面水蛇」が存在することによって、時には白蛇と敵対し、時には共に「蛙面水蛇」を追い詰めたりと、古典のストーリーに新たな面白みが加えられているようです。ツンデレ男。
この作品を見た中国のアニメファンが「よく知っている古臭い話なのに、驚くほど新鮮に楽しめる」と言っていたのを見かけたことがあります。

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こちらが主役の一人、白蛇「白素贞(bái sùzhēn/バイスーチェン)」。
1000年の修行を経て強力な法力を会得し、人の姿にも化けられるようになった蛇の化身です。
普段はとても物腰柔らかくしとやかな性格ですが、剣の達人でもあります。華麗に戦う姿が素敵。

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白素贞は話し方も優しく、アニメーションも細かなしぐさが妙に色気を感じさせます。
名前は間違っても日本語読みで「はくそてい」なんて呼んではいけません(笑

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こちらがもう一人の主役、青蛇「小青(xiǎo qīng/シャオチン)」。
小青は500年の修行を経て法力を得た青蛇の化身で、好奇心から白素贞の後を追って地上に降り、最初は色々と白素贞にちょっかいを出してきます。白素贞とは全く異なった性格で、感情を隠さず自由奔放。

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小青は力量が未熟にもかかわらず、自信過剰な性格とその好奇心の高さから、自分よりも格上の白素贞・法海・蛙面水蛇に果敢に戦いを挑んでいくおてんば娘です。
メインキャラクター達の序盤の力関係はこんな感じ。
法海>白素贞>蛙面水蛇>>小青
このなかで小青がどのように立ち回り成長していくのかというのも、テーマの一つとしてアレンジが加えられているみたい。実際のところ物語は小青中心に進んでいくので、実質的な主役は小青なのだと思います。そういえば小青は確かCCTVの中国アニメキャラクター人気投票でもトップになっていたような。
蛙面水蛇は序盤では封印から解き放たれたばかりで本来の力を失っており、しばらく白素贞たちから身を隠して力を蓄えているようです。

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小青に恩義を感じてお供になったいたずら好きな小鬼「五鬼(wǔ guǐ/ウーグイ)」。
この作品のマスコットキャラ的な存在です。正直なところ最初見たときは「不細工なマスコットだなぁ」などと思っていましたが、作品をよく見てからは従順で健気なキャラクターだと気付きました。すごく可愛いです。

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五鬼が仲間になるまでのエピソードもしっかりしていて、小青に対しての内面的な態度や意識がどのように変化したのかという点についてもきちんと描写されています。
多くの中国アニメはそういった表現が疎かでキャラクターの行動に違和感を感じることがあるのですが、「水漫金山」ではこのような細やかなキャラクター描写によって登場人物を自然で魅力的にしているように感じます。
いわゆる動機付けというやつでしょうか。よく知りませんけど。
この作品は音楽も本当に美しく、特にオープニングの主題歌は映像とも相まって日本のアニメにはない独特な雰囲気と魅力を感じます。こういった中国らしい作品は本当に大切にしていってもらいたいですね。

 

アニメ「水漫金山」はこちらのCNTVの配信サイトで視聴できます
CNTVの「水漫金山」配信サイト

 

ところでこの「水漫金山」は中央電視台(CCTV)系列の古典アニメ「美猴王」と作りがよく似た部分が見受けられます。例えば登場するキャラクターのデザインがそうなのですが↓
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左が「水漫金山」に登場する菩薩、右が「美猴王」に登場する菩薩です。
「美猴王」には中央電視製作の古典アニメ「哪吒传奇」のキャラクターも登場しています。

この「哪吒传奇」「美猴王」「水漫金山」は他にもエンディングクレジットの文字の色や配置などの構成にも共通の特徴があるように思えます。
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「哪吒传奇」のエンディングクレジット

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「美猴王」のエンディングクレジット

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「水漫金山」のエンディングクレジット
主題歌の作曲者や音響スタッフも共通であったりと、共通点が非常に多い作品となっています。
制作会社自体はそれぞれ異なっているのですが、いずれも中央電視台が企画に関わっているようなので、これらの作品は中央電視台監修による名作古典シリーズと考えてよいのかもしれません。いずれもとても品質の高いアニメ作品です。

そういった意味で、同じく中央電視台が関わっているこの古典アニメ「花之木兰(huā zhī mùlán/ファージームーラン)」がこの中央電視台の名作古典シリーズに入ってくるんじゃないのかと思って期待してたりしてます。

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「花之木蘭」ちょっと動向が気になる中国アニメ作品の情報

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2 件のコメント

  • >白蛇伝は日本でも初の長編カラーアニメとして映像化され、日本のアニメ業界にも多大な影響を与えた作品として知られているようです。
    実は東宝で実写映画「白夫人の妖恋」もあり、主演(白素貞)が山口淑子(東洋一の美女と言われた李香蘭です)小青が八千草薫という
    少し前の香港映画に「青蛇」というタイトルなので、小青は人気キャラなのかもしれませんね

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